10月8日、ANARCHYとBADSAIKUSHによるコラボ曲「DAYDREAM」のMVが公開された。
それに伴い、各種配信サービスでも曲が聞けるようになった。今回は、東西のリアルラッパーのコラボについて焦点を当てていこう。
舐達麻の過去記事はこちらから↓
舐達麻がBUDS MONTAGEをリリース!舐達麻のビートの秘密を公開
ANARCHY×BADSAIKUSHはヘッズ歓喜の組み合わせ
ANARCHYとBADSAIKUSHはもはや説明不要の人気ラッパーだ。
以前からSNSなどで交流があることでも知られていたが、この度「DAYDREAM」でファン待望の共演が実現した。
ビートは舐達麻でおなじみのGREEN ASSASSIN DOLLAR。
MVの監督は舐達麻の100MILIONS(REMIX)や、JP THE WAVY、Mall Boyzなど日本語ラップの映像を数多く手掛けるSpikey John。
美しいメロウなサウンドと波の音、海とセクシーな女性のショットからラッパーが蹴る。もはやHIPHOPの様式美ともいえるシーンから始まるMVだが、和のテイストが強い場面と対比させることでANARCHYとBADSAIKUSHらしい個性が出ている。
公開1週間で再生回数100万回をゆうに越えているほど多くの関心と注目を集めている1曲だ。
THE KING、ANARCHYの貫禄
熊谷まで行けば多分癖になる
THUGはどこで何をしていたって額の絵になる
GANG気取りの夢なんて純度低いケミカル
命を削って作り上げる不朽の名作
そーゆう事 この名前が看板
俺がいる限り狙え 二番か三番(ANARCHY)
さすがKINGらしいパンチラインが満載だ。
ANARCHYはかねてより、自分の人生や身を削って音楽を生み出すラッパー達に敬意を払っている。
その分リアルであるか、クールであるかのジャッジメントは厳しい。
「売れる音楽がしたい。」「ラッパーの価値を示したい」と語る彼だが売れてビッグになったからスターなのではなく、元から自分だけの姿を模索し続けているから唯一無二なのだ。
現在は自身のレーベル1%(ワンパーセント)を主宰しているが、avexとの契約の時にナイキのジャージで颯爽と現れた時のカッコよさを今でも鮮明に覚えている。
当時はまだメジャーレーベルとの契約には賛否両論あったが、ANARCHYが長らくあった日本語ラップの低迷期を支えシーンを盛り上げた立役者の1人であることは疑いようがない。
「DAYDREAM」のMVラストで彼らしいスタイルのスーツ姿が見られるが、様々な経験を経た彼だけが持つ渋い魅力がある。
自らが生み出すアートに真摯に向き合うBADSAIKUSHと手を組んだのは必然だろう。
鋭さを増すBADSAIKUSHの歌詞
文字の羅列磨いて向かう裁判所の階段
不確か、だけど確実に13 咳き込んでは
復讐の算段 音楽と売人の間を行き来してる毎晩書く行為が祈り 刻む頭から靴底に
確実に あの時より良い 今が一番良い 明日も同じ
だけどあの時と同じ 臭い飯が隣
バビロンが手招きする隣気化する大麻の液
達麻 Young Gunzがバラまく持ち出す熊谷駅(BADSAIKUSH)
ここに来て切れ味というか、リリシストぶりが加速しているのには驚く。
裁判所への階段を13階段(死刑台の例え)として、復讐の算段をしながらラッパーと売人の間を行き来してる毎晩・・・と細かく踏みながら結ぶライムは芸術的だ。
料亭と思われる暗い日本庭園風の空間、和室、ジョイント片手にゴールドを並べながらのマネーフォンポーズ、猫を愛でるBADSAIKUSHは「まさに舐達麻の世界観だ~!」と上がってしまう。彼ら流の陰翳礼讃だ。
MVには舐達麻のメンバー、G-PlantsとDELTA 9 KIDがカメオ出演しており、G-Plantsは「Real Side 履いたRhyme 当然の振る舞い~」の部分を作詞している。
舐達麻が脚光を浴びたころ、埼玉県から彼等のようなリアルハスラーなラッパーが出てきたことが意外だという意見を目にすることがあった。BAD HOPやZORNなど、都心の下町や工業地帯から上ってきたラッパーにはなんとなく納得する人が多いのとは対照的だ。
熊谷市ではないが、埼玉県の郊外出身の身からするとあまり意外性はない。県外に住む人からするとのどかなイメージがあるのだろうか。
確立したヤンキー文化があるわけではないがどこかダウナーというか、停滞している空間特有の現実的なサグさがある。
起きてみる夢は覚めない
ANARCHYはこれまで、多くのラッパーとコラボして新たな一面を見せ続けてきた。
BADSAIKUSHも過去にRYKEYと曲を出しているが、あまり他のラッパーとの共作は多くない。そんな2人が組んだ「DAYDREAM」はGREEN ASSASSIN DOLLARの美しいトラックと相まってまさに白昼夢のような心地になる。
しかも事前プロモーションなしでこれだけ高クオリティのMVを公開したのは心憎い演出だ。
曲もビデオもリアルなラッパーにしか出せない魅力に満ちているので、繰り返し視聴して楽しんでいきたい。