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舐達麻

舐達麻はギャングスタかリリシストか?その正体に迫る

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舐達麻は、近年の日本語ラップ界の最重要グループだ。過去の経歴やバズったことについて注目されることも多いが、彼等はただSNSで消費されるような色物ではない。

「nujabesのサウンドにTOKONA-Xのリリック」「現代のMSC」などと評されることもあるが、それだけではない確立した深い世界観を持っているのがHIP HOPヘッズ以外からも支持される所以だろう。

今回は、舐達麻の魅力について楽曲紹介を交えながら解説していきたい。

舐達麻についての過去記事はこちら

舐達麻が作り出すカルテル

舐達麻の中心人物BADSAIKUSHは、舐達麻をカルテルだと評する。

自分たちの会社をアフロディーテギャング「ホールディングス」としているように、将来的にクルーのメンバーで様々な活動を展開していくのだろう。

HIP HOPヘッズで舐達麻を知らない人はもはやいないに等しいが、念の為どんなグループかおさらいしておこう。

埼玉県熊谷市をレペゼンしているクルーで、現在のメンバーはBADSAIKUSH/DELTA9KID/G‐PLANTSの3人だ。これまで何度かメンバーは変移している。

日本語ラップの魅力を70年代調の画風で描く服部昇大氏は、舐達麻についてこう表現している。

ウシジマくんみたいな人達がウシジマくんみたいな事をラップしてるグループとは、良い得て妙だ。

たしかに彼らのリリックには、イリーガルな生きざまがそのまま描かれている。

上を見て 振り返る 繰り返しては 下を見て探してた半透明な 結晶 

聞こえなくなった右耳や左腕の静脈に溶けていった

刺した針の数が今に水を刺し嫌気が刺した(BADSAIKUSH)

いつもここから 常識の外側

まずは家の大量のネタを隠すとこから/

渋滞 ネクストの倍 3MC ALL THC

プッシュしてサプライ 真っ赤なサードアイ fly(G-PLANTS)

レペゼンの中央警察署

取り調べのマル暴

おれは輩とは違う

ラッパーだクソ野郎

たかだか大麻 ガタガタ抜かすな(BADSAIKUSH)

500万再生を突破した「LifeStash」はBADSAIKUSHのリリックがきっかけでバズったことでも有名だが、実はコメント欄に留置所で同室だった人からのコメントがある所も味わい深い。

日本だけでなく世界中でも同じだが、ギャングスタラップやストーナーラップは自分の経験をリアルに描写するタイプか、他人の経験などをヒントにする作家タイプに分かれる。舐達麻の場合は完全に前者だ。

InterFMのSummer Bomb 2019 Specialラジオに出演した際、次のように語っている。

「自分の本心を歌ったらそれぞれの個性が出る。それがよくあるような話でも、何曲も作っていけば『嘘つかない奴ら』だと分かってもらえる。」

また、別のインタビューでは「ニュートラルな状態を曲にしないと意味がないと思っている。芸術っていうのは自分の感覚を目に見える形で出すだけ。」とも語る。

参考:舐達麻が舐達麻たる由縁! 高純度を追い求めた〈血・肉・音〉

とはいえ、ラッパーには曲や自身のキャラクターを魅力的に演出するためのボースティングも重要だ。舐達麻の場合それは出来事を誇張するのではなく、語り方で工夫するのだそう。

今だからこそ生まれたサウンド

もはや舐達麻の代名詞ともなったGREEN ASSASSIN DOLLARのサウンドは、ともすれば重たくなりかねないリアルハスリングライムを美しく彩る。

舐達麻の楽曲は「90年代の正統派サウンド」などと評されることも多いが、個人的には「今だからこそ生まれたサウンド」だと感じる。

GREEN ASSASSIN DOLLARがシティポップやLo-fiサウンドに影響を受けていると語っていることも理由のひとつだ。

Lo-fiサウンドの祖と言われるNujabesは90年代末から2000年代に注目を浴びたが、少し前の世界的なLo-fiムーブメントは2013年のオランダのChillhopというレーベルが発表した「lofi beats」ミックスが発端と言われている。

90年代にイギリスで流行したトリップホップにも近いが、よりシンプルな構成でそれによりどこか切ない雰囲気が出るのがLo-fiサウンドの特徴だ。

ちなみにGREEN ASSASSIN DOLLARは読書家で、

・村上龍「限りなく透明に近いブルー」

・村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」

・安部公房「箱男」

などが好きだという。(限りなく透明に近いブルーはBADSAIKUSHも愛読書として挙げている。)

これらのチョイスは、彼が生み出すサウンドの世界観と通ずるものがある。リアルだからこそ美しく儚い。

DJ NaiChopLaw時代の楽曲もまた違ったチルさがあって気持ちいい。

哲学が滲むリリック

先ほど、舐達麻の歌詞は出来事ではなく表現を工夫していることについて触れたが、この項目を掘り下げよう。

BADSAIKUSHは「ある時、日本語には鋭い言葉とそうでない言葉があることに気づいた。」とインタビューで語った。

この言葉で太宰治「人間失格」のとある場面が思い起こされた。

主人公の葉蔵が堀木と名詞を喜劇名詞(コメディ)・悲劇名詞(トラジティ)に分ける遊戯のシーンだ。

例えば、汽船と汽車は悲劇名詞。市電とバスは喜劇名詞。「それのわからぬ者は芸術を談ずるに足らん」とまで書かれている。

作中では薬について、注射は悲劇(トラジティ)に分類されている。彼等が愛するマリファナはどちらだろうか。

BADSAIKUSHはリリックを書くのが早いので、hookを担当することが多いG-PLANTSはその内容から考えるそうだ。

G-PLANTSのリリックはリズミカルな言葉選びが特徴的だ。熟語や英単語を盛り込んで細かく踏むスタイルは、曲中でもバランサー的な役割を担っている。

これまでDELTA9KIDについて触れてこなかったが、メンバーの中でも髄一のリリシストが彼だろう。

こうしてればなんて 今さらの過去

鉄格子の中 睨む曇る窓

目覚ますかのように降る五月雨

窮屈な退屈を落とした影(LIFE STASH)

 

時間は奪えど心は奪えない

強く抱きしめるこんな美しい夜は

2度とは来ないかもしれないから

まぶたの裏に焼きつける姿
終わりない口づけ交わり待つ朝(100MILLIONS)

メディアでは無口だが、彼が情緒的で豊かな感性の持ち主であることは容易に想像できる。

言葉数の多いラップがスタイルだが無駄なフレーズなどひとつとしてない。それがたとえ過去のイリーガルな行為についてのライムだとしても詩人が紡ぐ美しい言葉にあふれている。

当然だが犯罪行為自体を賛美する意志はない。だが、芸術の花はどこにでも開くのは事実だろう。

今後はどんな鋭い言葉を生み出すのか

今回は舐達麻について、サウンド面とリリックの両方の要素からご紹介した。

本人たちは売れてからもいたってクールな姿勢を保っているが、これほどまでにプロップスを集めるのは運ではなく必然だと感じる。

AGHはアパレルブランドとのコラボなども展開しているが、やはりファンとしては次の音源が楽しみでならない。

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