平成を代表するマイクリレーと言えば、もちろん『証言』が挙げられるだろう。今回ご紹介するのは、証言にも負けず劣らず、スキルフルで豪華なメンバーが揃う、Summitの『Theme Song』だ。バトルビートとしてもよく使われているので、一度は耳にした事がある方も多いのでは無いだろうか?総勢10名のマイクリレー、参加メンバーをそれぞれの楽曲紹介と共に簡単に解説、すでにご存知の方も多いかも知れないが、ディグの手掛かりになれば幸いだ。
まずは『Theme Song』を聴いていただこう
約8分間にも及ぶ楽曲でありながら、間延びする事もなく流れる様に進行していくマイクパス、一瞬たりともリスナーを飽きさせる事のない極上の仕上がり、いかがだろうか?
総勢10名、HIP HOPレーベル『Summit』所属の3つのクルー『SIMI LAB』『THE OTOGIBANASHI’S』『PSG』が参加している。ここからはそれぞれのクルーごとに分けて、クルーとソロそれぞれの楽曲をご紹介していこう。
『SIMI LAB』
2009年、神奈川で結成したクルー。メンバーはハーフが多いが、大半の母国語は日本語。それぞれのソロ活動も活発で、HIP HOPシーンを中心に、ROCKやJAZZ界隈からの反響も得ている。今までに2枚のアルバムをリリースしている。
RIKKI
MC兼トラックメイカー。Theme Songでは1番手としてマイクを握る。SIMI LABには、幼馴染みのJUMAの誘いで加入。それ以前から、個人の楽曲作成も行なっている。
MARIA
MC。Theme Songでは2番手としてマイクを握る。今楽曲、唯一のフィメールラッパー。在日米軍の父と日本人の両親を持つ。高校生ラップ選手権で審査員も務めている。他のフィメールラッパーとは一線をかく力強いラップがクールだ。
DyyPRIDE
MC。Theme Songでは3番手としてマイクを握る。ガーナ人の父と日本人の母を両親に持つ。現在はSIMI LABを脱退している。これまでに2枚のソロアルバムをリリース。とても濃い内容のリリックが特徴的で、1st、2nd共に聞き応えのある作品に仕上がっている。また、2019年には檀廬影(だん いえかげ)名義で小説家デビューもしている。
OMSB
MC兼トラックメイカー。Theme Songでは1度目のフック後の5番手としてマイクを握る。MCとしての活躍はもちろんの事、トラックメイカーとしてもZORNやKOHHへの楽曲提供、Killer Bong率いるレーベルBlack Smokerからビートアルバムをリリースするなど、幅広く活躍している。今までに3枚のソロアルバムをリリース。ラップのスキルの高さが評価され、DJ KRUSHのアルバム『軌跡』にも参加している。また、最新PV『波の歌』も話題となり更なる注目を集めている。
JUMA
MC。Theme Songでは7番手としてマイクを握る。ソロでの活動はあまり活発では無いようだが、彼もスキルは間違いない。流れるような心地よいラップは絶妙だ。ここでは、同じくSIMI LABからUSOWAとの楽曲をご紹介。
USOWA
MC兼トラックメーカー。Theme Songではラストの10番手としてマイクを握る。軸のあるオールドスクールなラップと安定感の強いスキルが堪らなく良い。SIMI LABのメンバーの各ソロアルバムなどにもフューチャリングとして多数参加している。
『THE OTOGIBANASHI’S』
BIM、in-d、PalBedStockの3名で構成されているHIP HOPクルー。Summit所属。BIMの呼びかけにより2011年に結成。Theme SongにはBIMとin-dの2名が参加。
In-d
MC。Theme Songでは4番手としてマイクを握る。低めの落ち着いた声が特徴。高校時代BIMの誘いによりTHE OTOGIBANASHI’Sの初期メンバーの一人となる。2017年に自主制作でミニアルバムをリリース。そして、2019年より本格的なソロ活動を開始している。
BIM
MC兼トラックメイカー。Theme Songでは6番手としてマイクを握る。2017年より本格的にソロ活動を開始。2018年、ソロでの1stアルバム『The Beam』をリリース。それを皮切りに多方面から反響を呼び話題となる。心地良くハイセンスなフローはとてもやみつきになる。
『PSG』
板橋区の3人組HIPHOPクルー。PUNPEEとGAPEERによる『P&G』にPUNPEEの実の弟S.L.A.C.K.が加入し『PSG』となる。2009年リリースの1stアルバム『David』は日本語ラップを語る上で欠かせない1枚と言っても過言では無いだろう。Theme SongにはPUNPEEとGSPPERの2名が参加している。
PUNPEE
MC兼トラックメイカー。Theme Songではフックと8番手としてマイクを握る。PSGでの活動開始前、2006年のUMBで優勝を果たしている。また、2017年にリリースされた1stアルバム『MODERN TIMES』はHIPHOP界隈だけではなく、各方面からの反響が寄せられた。昨今の日本語ラップシーンにおいて最も注目を集めているMCの1人である事は間違いないだろう。
GAPPER
MC兼トラックメイカー。Theme Songでは9番手としてマイクを握る。謎多きMCだが、彼のスキルは絶品。心地よい押韻と軽やかなフロウは右に出る者はなかなか居ないだろう。これまでに3枚の音源をリリースしている。
最後に
今回、『Theme Song』を含め18曲を紹介しました。あまり最新の曲は多くは無いのですが、どの曲も良質な楽曲ばかりだと思います。しかし、今回ご紹介させて頂いた楽曲達も、数多にある日本語ラップのほんの一部にしかすぎません。是非とも、流行だけにとらわれず自分好みの『日本語ラップ』をディグしていただければ、そしてその手助けが少しでもできれば幸いです。