直近数年でバトルシーンのレベルは急激に向上した。昔はちょっとした韻や言い回しでもアガったのだが、今はそうではない。
もはや「スタンダードなライム」だけで勝ち上がれるような、甘い世界ではなくなって来ている。
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そんな厳しいMCバトルの世界において、「韻」を武器として暴れ回っている”バチスタ”。
今回はバチスタのプロフィールや魅力についてご紹介。
バチスタとはどんなラッパー?
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バチスタは、横浜出身のMC。高校生ラップ選手権などには出場しておらず、現場たたき上げのMC。
バチスタは、同じくライマーであるSAMと同居している。私生活ではラッパーしかやっていないようだが、プロップスならラッパー専業でやっていけそうではある。どうも若干ルーズな部分があるようで、SAMに「寝ばっくれのバチスタ」などと揶揄されたこともある。
最近ではHIPHOPの在り方について、「TERU」とビーフを繰り広げていたことがある。
発端はバチスタ本人のツイート。
https://twitter.com/bcstinged/status/1178861418541539328
これは「空音」が、「自分はHIPHOPじゃなくてもいいから、音源をアートとして聴いてほしい」といツイートをしたことへの批判。
というようなツイートをしたことに対して、バチスタが噛み付いているという図式。そして空音の主張に共鳴したTERUが、別な角度から噛み付いてきて、ビーフへと発展した。
「バチスタはHIP-HOPがPOPになっていくことに危機感を持っている」ということがうかがえる。
現在ではバチスタとTERUとのビーフは決着していて、遺恨は残っていない様子。今後は現場でTERUとバチスタが共演することもあるだろう。
https://twitter.com/bcstinged/status/1183960206578835457
バチスタのバトルスタイル
(引用:Youtube)
バチスタの特徴は、独創的かつどこまでも繋がり続けるライム、そしてクールなアティテュード。SAMと同居しているだけあってか、ライムのボキャブラリーは一級品。「あ、そことそこって踏めるんだ」というクオリティのライムをいくらでも見せてくれる。
バチスタの韻は、「どこまでも繋がり続ける」のがポイント。
「終着点・出発点・スーパープレー・数段上・銃殺刑・中学生」
いつまでも連鎖する。
意味をつなげた上でのロングライムは圧倒される。「今日はどこまで繋がっていくのだろう?」と思わされるので、観衆の目をロックすることにも長けている。韻を追っかけていて、気がついたら8小節終わっているという印象。そしてバチスタの真骨頂は、逆鱗に触れられた龍さながら、「ある単語が出されたとき、急にスイッチが入る」というところ。おそらく彼の中にはひとつの単語を起点にする「韻のまとまり」が、いくつもあるのだろう。
そこに関連づいた単語を出したが最後、トップオブザヘッドで5個、6個くらい韻をつなげて、試合を終わらせに来る。バチスタと相対するMCは、常に彼の逆鱗を触ってしまうリスクについて計算しておかなければいけないのかもしれない。
そして、一貫してクールなアティテュードを保つのも、バチスタの特徴。大声で叫んだり、ギャグに走ることは一切ない。一貫して渋い印象があり、玄人好みのラッパーだと言えるだろう。
バチスタのベストバウト
バチスタは、ベストバウトを選ぶのが難しいMCだ。何にせよバトルに安定感があるので、常にハイパフォーマンスを発揮していて、甲乙付け難い。
あえてふたつ挙げるとすれば、以下のとおりだ。
ADDVANCE STRATOURTS 決勝 vsがーどまん
「From横浜落とすLike a 大魔神佐々木」
凱旋で一度下しているがーどまんとの再戦。“大魔神佐々木”までの落とし方がえげつない。「サイファーのガキ」を起点にしていて、少しずつ単語の響きをズラしていった結果この着地になった。技術論で言うと「踏み外し」というテクニックだが、バチスタはこれがものすごく上手いのである。
アンサーもキッチリ返しているし、がーどまんが嫌がりそうなところもロジックで突いている。韻は踏むしイヤなことは言うし、話も矛盾しない、ということでは、なかなか攻め所が見つからないだろう。
凱旋MC battle 東西選抜夏の陣2019 ベスト16→8 vs BASE
「死に物狂いで人生いいこと尽くし」
何が効くのかよくわからないBASEとの試合。この試合では、「鼻からコカイン」から繋がるライムの連打が決まっていた。また、「お前が薬が好きだと言っているのは、俺がポテチが好きだと一緒だと言っているのとおんなじ」と冷静に指摘したところもキレていた。
この試合だけでおそらく30個くらいは韻を踏んでいる。
バチスタの音源
バチスタの音源は、以下のとおり。
バチスタではなく「BCST」の名義で活動している模様。
ちなみにSoundCloudにもいくつか曲がアップされているので、聴いてみてほしい。
<Method>
何も変わらないような毎日
俺の行く道を阻む撒菱(まきびし)
裏側の葛藤と猜疑心(さいぎしん)
全て意味を成してるMy lyric
基本的に「クールにライムする」というスタイルはそのままに、ラッパーとしての生き様=”Method”を語る。
「バトルスタイルと音源での表現が一致していない」というのは、しばしばヘッズをガッカリさせてしまうものだが、これなら聴き入りやすいだろう。ライムはベーシックだが、フロウが気持ちいい。母音を合わせることの音楽的意味合いをたっぷりと感じられるだろう。
<Living In A Crisis>
一生は一瞬の集合で 最後弾け飛んで終了
だから大都会の中で声を大にして叫び散らかす
ダイナマイト腹に巻いてバイト代で博打に出る
「博打」は、ダイナマイトだけに「爆竹」とかけているのかも。
2020年10月時点での最新リリースはこれ。フロウもライムもさらに進化していることが開始2小節目でわかる、インパクトのあるナンバーだ。HookがCOOLさに裏打ち気味のビートに乗っかる渋い声は確実に鳥肌が上がる。バチスタが音源を出し始めたのは最近のこと。バトルはもちろんのこと、音源での活動も期待したいところだ。
音源制作にエンジンがかかるには、もうしばらくかかるだろうから、気長に待とう。
バチスタ、その他の活動
MRJとは繋がりがあるようで、「弁論対決」(普通の言い合い)企画に出ていた。
ひとつのテーマについて反対の論陣を張って言い争うという趣旨のイベント。バチスタ曰くニンテンドーDSは足の指を挟んで粉砕させるための拷問器具らしい。
ニート東京にも出演。上記動画では年齢が明かされている。
誰かが「バトルもたいがい来るところまで来た、その先を見せないと」というようなことを言っていた。実際バトルシーンは進化を遂げ、ただガナるだけ、母音を合わせるだけでは、ヘッズたちはぴくりともしない。そしてバトルシーン自体が「アイドルたちの見せ場」のようにイヤな意味で変化していっている。
そんな中でバチスタの重い存在感は、ずっしりと感じられる。
やっぱりラッパーは渋さだ。