2020年10月28日ラッパーのBASIが、Shin Sakiuraとの「komorebi」をYouTubeに公開した。
優しいギターの音色と、浮遊感のある聴き心地の良いサウンドに、BASIのリリックが木漏れ日のように絡みつく素晴らしい楽曲となっている。Shin Sakiuraは、東京を拠点に活動するプロデューサー兼ギタリスト。エモーショナルなそのギターからは、HIP HOPだけでなく、R&Bからもインスパイアされたムーディーなシンセ・サウンドが放たれる。これまでには、SIRUPのライブのギタリスト/マニピュレーターとしてサポートし、向井太一、showmore、Rude-α、miwaなど数多くの楽曲にプロデュース/ギターアレンジで参加するなど活動の場を広げ、アパレルブランドや企業のPV、CMへの楽曲提供など幅広く活躍している。
そのShin Sakiuraとヒップホップキャリア22年目の大ベテランBASIのコラボに、ヒップホップファンだけでなく、多くの人が心を奪われた。
「komorebi」のMVでは、優しく暖かさを感じる色を基調とした背景をバックにBSSIとShin Sakiuraが音を奏でる。おしゃれでチルを感じられる映像も相まって、「komorebi」は森林の木立ちから太陽の日差しが差し込むように、聴くひとの心に優しく差し込まれる。
キャリア22年目となった今でも、その勢いはとどまることを知らず、常にヒットチャートを生み出し続けるBASI。今回は、そんなBASIのこれまでのキャリアと、ヒットチャートを生み出し続ける秘密に迫る。
ベテランラッパーBASIのこれまで
BASIは1978年生まれの大阪府佐野市出身のラッパー。1998年6月に韻シストを結成し、多くの名曲を生み出し続けた。2001年に「ONE DAY」でデビューして日本語ヒップホップシーンに新しい風を巻き起こし、2003年には、EPIC SONYから「Hereee we go」をリリース。2014年10月にリリースされたCharaと韻シストのスペシャルコラボシングル「I don't Know」では、ファンキーなラップを披露するなど、確実にキャリアを積み、多くのファンを獲得してきた。
その中でも、鎮座ドープネスとチプルソとフューチャーリングした「HOT COFFEE」は、即興で作った歌が音源になったこともあり、かなり話題になった。
YouTubeチャンネルCOCOLOSTUDIOの動画でのフリースタイルセッションの中で生まれた「HOT COFFEE」は韻シストを代表する名曲となった。
また、2011年には、BASI自身のレーベル「BASI MUSIC」を設立し、「RAP AMAZING」から、ソロ・アルバム4枚を発表した。それ以来、韻シストのラッパーだけでなく、ソロ活動もこなすようになったBASI。2017年からBASI&THE BASIC BANDとしての活動も開始しており、キャリア22年となった今でもその勢いは衰えるところを知らない。
多くのヘッズを惹きつけるBASIの魅力とは
BASIの特徴は何と言っても、「愛」を感じられる暖かいリリックだ。
2017年4月5日にリリースした「LOVEBUM」や、2019年6月26日にリリースしたアルバム「切愛」。アルバムのタイトルからもわかるように、そのテーマはどちらも「愛」
その中でも、「切愛」に収録されている沖縄のラッパー唾奇とフューチャーリングした「愛のままに」は大きな反響を呼んだ。
BASIは「愛のままに」のトラックを初めて聴いた瞬間、「テーマやリリックは決まってないんだけど、とにかくフィールしたんで、キープしておいて欲しい」と速攻で電話したと語っている。
「LOVEBUM」を作り終えた時、BASIには愛をテーマにした第一章を終えたな。という感覚があったという。その上で、第二章となる「愛のままに」を作り始めるときに、何か新しいことをしたいと思い、自身の好きなラッパー唾奇を客演に迎える事に決めた。
唾奇はそれまで、愛について明確なリリックを書くようなラッパーではなかったが、逆にそれがBASIの「唾奇という人間が愛について歌ったらどうなるだろう」という好奇心をくすぐり、このコラボが実現したという。
そんな唾奇が愛について歌ったLyric
人生は山あり谷あり痛みなしで得る幸せはそうないと思う
太陽のような暖かさ 対等に分け合うsummer
飾らないanytime 君の虜みたい 類を見ない幸せの天才
人の不幸は踊れるだろ?と歌っていた唾奇から、類を見ない幸せの天才という言葉が出るとは誰が予想しただろうか。
~hook~
夢の途中であなたに出会い愛を覚えた
例え世界がどうなろうとも愛のままに
ラッパーがこんなに直接的に「愛」を表現することは、これまでになかった。だからこそこの曲は、ヒップホップヘッズのみならず、多くのリスナーに届いたのだろう。
「愛のままに」を収録した「切愛」は、豪華なの客演を迎えたことでも注目を集めた。中でも、「HOT COFFEE」でコラボした鎮座ドープネスや、SIRUP、空音、唾奇との繋がりを得たことでHANGや、TOCCHIなど沖縄で活動するラッパーなどを客演に起用する事もできた。
夕暮れ feat.HANG
「愛のままに」のリリースライブでBASIが沖縄にライブに来たときに、唾奇とのユニット・glitsmotelで登場したHANGの心に刺さる言葉とラップの力に心を掴まれ、オファーしたという。
この曲には、コーラスとしてkojikojiが参加しており、HANGの渋い声と、kojikojiのウィスパー気味なフロウ、BASIの暖かいリリックが最高にマッチしている。
チェック必須!絶対に聴くべきBASIの名曲5選
多くのラッパーとの共演で、数々の名曲を生み出してきたBASI。ここでは、その中でも特にオススメな5曲をチョイスし、紹介していこうと思う。
BASI / これだけで十分なのに(BASI REMIX)
BASI6枚目のアルバム「切愛」の9曲目に収録されている「これだけで十分なのに」
TOCCHIのデビュー曲「これだけで十分なのに」をREMIXした作品。
~hook~
本当に足りないものなんて 実はそんなないんじゃない?
僕はこれだけで十分なのにこれだけじゃ駄目ですか
周りと持ち物比べて色々と欲しくなって
人の目がそうさせるのかこれだけで十分なのに
今ある当たり前に感謝し、家族、友達、恋人、愛する人がいる世界ならそれだけで十分だよね。と歌った曲。この歌に関して、HANGはこのようにツイートしている。
めっちゃかっこいいし、本当にこの思想を持ち続けたいです。これだけで十分なのに / TOCCHI https://t.co/KF8R5HYdDt @YouTubeさんから
— Hang 徒歩で日本一周中 (@MCHANGfromsp) March 1, 2018
BASI / あなたには
3rdアルバム「RAP U」に収録されている「あなたには」
EVISBEATSのゆったりとしたトラックが本当に心地いいこの楽曲。
一度描いた夢なら 決して消す必要はない
日常の中で忘れがちな大切なことを思い出させてくれる楽曲。
GeG / Merrygoround feat BASI,唾奇,VIGORMAN,WILYWNKA
変態紳士クラブと唾奇とコラボした楽曲「Merrygoround」。ギターとして、韻シストのTAKUも参加している。
唾奇、VIGORMAN、WILYWNKA、BASIがGeGのトラックの上で、それぞれのフロウでラップをする。そのフロウは4人それぞれの個性を保ちながら、心地良いハーモニーを生み出す。誰一人として、欠けてはいけないこの5人での楽曲は現在YouTubeで1000万回再生を突破している。
2020年11月25日には、スタジオライブバージョンがYouTubeで公開された。
illmore - Drunk feat. BASI
illmoreの1stアルバム「ivy」に収録されている楽曲。YouTubeでの再生回数は少ないものの、知る人ぞ知るBASIの名曲。
~hook~
この星のように 回り続けてる
愛着だらけの レコードに浸る
君はこの曲が好きかな なんて酔いもちょうど回る頃
DJもメロウ 視界もスローモーション
Chilly SourceのDJ KUROが映像を担当したこのMV。
DJ KUROはこのMV撮影時にも白血病との闘病生活で入退院を繰り返していた。
それにもかかわらず、体の底から力を振り絞り、理想の映像が撮れるまで何度も撮り直したという。
BASI / 月ひとつ feat. 空音
「切愛」に収録されている空音との「月ひとつ」
トラックはLUCKY TAPESのKai Takahashiが担当している。2020年2月19日にYouTubeに公開されたこの曲のMVは、BASIが車の中で「本当に足りないものなんて実はそんなないんじゃない?」と「これだけで十分なのに」の歌詞をアカペラで口づさむシーンから始まる。雨という天気も相まって、エモーショナルな気持ちにさせてくれる一曲。
夜になるほどメロウに離れないメロディー
キミとのmemoryも今beatになる
途切れないテイデアのレインまた傘も差さないで
浴びるように歌う浮かぶ月ひとつ
そのリリックだけでなく、トラックに優しく絡みつくようなBASIのラップはチルを感じられる名曲。夜傘をさしながらつい散歩したくなるようなそんな作品となっている。
いかがだっただろうか。本当はもっとたくさんの楽曲を紹介したいのだが、今回は厳選した5曲だけを紹介した。今回紹介した曲以外にも数多くの名曲があるので、ぜひチェックしてほしい。
ヒップホップは古い価値観や固定観念への反抗など、ネガティブに捉えられるエネルギーが生み出した文化だが、BASIは他のラッパーとは異なり長いキャリアの中で様々な活動を経た事により「愛」というテーマにたどり着いた。日常のふとした瞬間を切り取ってリリックに落とし込むキャリア22年のベテランラッパーはこれからも数多くの名曲を生み出し、たくさんの人々を魅了していく事だろう。