ラッパー「ZORN」とは?東京葛飾区生まれの男、実はTHE罵倒3連覇を成し遂げていた

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般若、SHINGO☆西成に次ぐ昭和レコード3人目の男として知られるラッパー「ZORN(ゾーン)」。東京は葛飾区をレペゼンする彼は、日本語ラップ界でも一目置かれる存在である。

日本語ラップをこよなく愛する者であれば、一度は「ZORN」の楽曲を耳にしたこともあるはずだが、その特徴は何と言ってもリリックのワードセンス。
では一体、「ZORN」という男はどんなラッパーなのか?今回は、まだ知らないという方のために「ZORN」の魅力をピックアップしてお届けしよう。

「ZORN(ゾーン)」ってどんな人?元不良少年は人気ラッパーへ

東京の下町、葛飾区新小岩からスタートした「ZORN」のラッパー人生。元々"ZONE THE DARKNESS"という名で活動していたが、2014年に昭和レコードへ加入してから「ZORN」としてステージに立っている。これまで"ZONE THE DARKNESS"時代を含め、7枚のアルバムをリリースしており、彼の名を一躍全国区へと押し上げたのが4枚目のアルバム「サードチルドレン」と5枚目のアルバム「The Downtown」と言っても過言では無い。

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まずは「サードチルドレン」に収録されている2曲を!

「ZORN」を知るにはまず楽曲を聴いてから始まる。昭和レコードに所属してから最初のアルバムとなる「サードチルドレン」は、フリースタイルダンジョンのボス"般若"が監修した一枚。まず聴いていただきたいのは彼の人生を物語る「2 Da future」である。


(出典:【Lyric Video】ZORN / 2 Da future (from the album サードチルドレン) (P)(C)2014 昭和レコード
この「2 Da future」では、独特の言い回しと社会に対する攻撃的なリリックがインパクトを残しており、誰もが釘付けになる一曲。抑えておきたいポイントはいくつかあるが、特にサビ部分は彼を象徴する言葉が多く詰まっている。

「生きる意味なんて分からない 傘がない少年は雨ざらし
むしゃくしゃしたからやった 言葉になんて出来やしなかった
この傷は誰も知らない 訳も分からず涙が溢れた
教えてくれよ先生 ボクらの未来教科書何ページ目?」

既にお気付きの方もいるかもしれないが、甘いマスクとどこか刹那さえ感じる彼は、若かりし頃に3度も少年院に入所していた過去を持つ。いわゆる下町の不良少年だったのだが、その頃から彼のリリックセンスは光っていた模様。後に紹介する5枚目のアルバム「The Downtown」に収録されている"Backbone"では「18、19は少年院 作文コンクールは上出来 とっくに更生したよもう平気」というリリックにもあるように、少年院でも一人の表現者として群を抜いていた。

夢と生きる術を教えてくれる「Life goes on」

「サードチルドレン」でもう一曲ご紹介したいのが、般若の奥さんでもあるシンガーSAYを迎えた「Life goes on」。この楽曲は不良少年だった彼が、ラッパーとして生きるために何が必要かを描いた作品とも言える。


(出典:【Lyric Video】ZORN / Life goes on feat. SAY (P)(C)2014 昭和レコード

「この人生が物語なら 一体今はどの辺りかな
答えがないことばかりだがまだ終わりじゃない事は確かだ」

「でも情熱ってのはまるでロウソク 徐々に消耗する自ずと殺す
なら注ぐ老いる人は熱を失った時に老いる」

「俺は例外でもこれ以外ない保冷剤など余計なおせっかい」

など、彼にしか描けない人生観がリリック一つ一つに込められているが、何度も聴いていると彼の夢への道筋だけでなく、夢を夢のままで終わらせてしまう人達にエールを送っていることが伝わる。つまり、この楽曲は深みのある応援歌であり、何度踏み潰されても前を向け!というメッセージが随所で表現されているのである。人生にくじけそうになったらこの曲を聴くと良いだろう。

父として、そしてラッパーとして家族を支える

そんな不良少年は、現在2人の子を持つパパとして奥さんと35年ローンの家で4人暮らしをしているが、実はラッパー以外にも塗装工として平凡な毎日を過ごしている。この話は日本語ラップ界では有名な話だが、そんなパパとしての気持ちを全面に表した楽曲が2015年にリリースされた「My life」だ(5枚目のアルバム「The Downtown」に収録)。

(出典:【Official Music Video】ZORN / My life (Prod. by DJ OKAWARI) from the album The Downtown (P)2015昭和レコード
この楽曲は、既に350万回も再生されている最も人気のある一曲だが、ここでも彼のリリシストとしてのセンスが光っている。

「昼休憩は嫁の弁当 俺より朝早くありがとう」

「繰り返しの生活 くたくたで開ける玄関
娘たちの声おかえり あったかいご飯またおかわり」

「60wの栄光さ 全然金無くても成功者
一本道を行こう 洗濯物干すのもHiphop」

このように、日常生活を等身大に描いたリリックが並べられており、今の心境や奥さんと愛する子ども達、親父やお袋への感謝の気持ちがZORNならではの言葉で吐き出されていることがわかる。また、KOHHやAK-69など、ギラギラした世界で成功を収めたラッパー達とは異なる飾らない生活感が想像できるのだが、この平凡さが多くのリスナーの心に刺さったとも言えるだろう。

それをより感じるならMVを見た方が説明が早い。そして、ZORN曰く"親父やお袋、塗装工の仕事などハンデと思っていたものが映像として武器となっている。"と後に語っているように、「My life」は重要なターニングポイントとなっていることが伺える。

【番外編】
ちなみに、6枚目のアルバム「生活日和」のリリース記念ワンマンライブのフライヤーは、ユーモア溢れるデザインとなっている(実はZORNが手書きでデザイン)。
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また、2017年12月のワンマンライブのフライヤーには「こどもは、ふうせんとわたあめがもらえるよ!」の文字が。HIPHOPのイメージを覆す可愛いフライヤー、私は全然アリですね。それもこれも実力派であればあるほどね。
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実はTHE罵倒3連覇を成し遂げていた!

リリースする全ての楽曲にそれぞれ異なる味があり、常に話題を呼ぶ男「ZORN」。リリシストとしての才能はフリースタイルから培われたのは、あまり知られていないかもしれない。
そう、彼はかつて「ZONE THE DARKNESS」時代に数々のMCバトルに出場。
"REPRESENT MC BATTLE 2007"ではフリースタイルダンジョンの2代目モンスターでもある輪入道と対決し、"B-BOY PARK 2009〜UNDER 20 MC BATTLE〜"では当時17歳だったレペゼン大阪のコペルと決勝で戦っている(この時はコペルが優勝)。

"REPRESENT MC BATTLE 2007"輪入道戦


(出典:REPRESENT MC BATTLE 2007 準々決勝、準決勝!)

"B-BOY PARK 2009〜UNDER 20 MC BATTLE〜"決勝

(出典:『BBOY PARK 2009〜UNDER 20 MC BATTLE〜』決勝トーナメント(2/2))

また、東京の下町が生んだ「THE罵倒」でなんと3連覇を達成。その実力はUMB(ULTIMATE MC BATTLE)で同じく3連覇を成し遂げたR-指定も認めるほどの人材である。後にR-指定は"勝手にライバル視していた"と語っており、特にUMB2010東京予選のバトルを見てフリースタイルの考え方が大きく変化した模様。それほど影響力のあった「ZORN」のバトルだが、確かにR-指定同様にライム一つ一つに意味があり、ユニークなフローをカマすMCとして多くの共通点があるかもしれない。しかし、今後フリースタイルダンジョンに登場する可能性はあるのだろうか...。

「ヤクブーツはやめろ」でお馴染みのS.H.Oの動画にも登場!

また、今も時間さえあればフリースタイルを行なっているようなので、現在アップされている動画をディグってみると良いだろう。特に「ヤクブーツはやめろ」で話題を呼んだS.H.Oの動画にもかつて登場していたのは、正直驚きである。約2分の動画でスムーズなフリースタイルを見せつける「ZORN」に対し、どこかぎこちないS.H.O。レベルの差と貫禄を感じる内容となっている。


(出典:S.H.O × ZONE THE DARKNESS Freestyle 282/365 2012)

これは聞いて欲しい!「ZORN」の曲ベスト3!

フリースタイルも出来る「ZORN」ですが、やはり彼の魅力を感じるなら過去の楽曲をテープが擦り切れるまで聴いてもらいたい(例え話)。
というわけで、これまで紹介した楽曲以外に聴いて欲しいおすすめ楽曲をランキング形式でご紹介しよう。

「奮エテ眠レ」

まずは、"ZONE THE DARKNESS"時代の名曲である「奮エテ眠レ」。当時20歳だった「ZORN」ですが、まさに孤高の天才とも言えるリリックセンスには脱帽の一言。若者の心を掴んだリアルな言葉と渋みのあるトラックは今もなお多くのヘッズ達に愛されている。


(出典:ZONE THE DARKNESS /『奮エテ眠レ』 /pro. Michita)

葛飾ラップソディーfeat.WEEDY

5枚目のアルバム「The Downtown」に収録されている"葛飾ラップソディー"。地元・葛飾区を舞台にした心地よい楽曲だが、"メトロは無いけどレトロがある あんま便利じゃないけど歴史がある"...など、そうきたかー!という緩いリリックが特徴的とも言える。


(出典:【Official Music Video】ZORN / 葛飾ラップソディー feat.WEEDY / from the album The Downtown (P)2015昭和レコード)

KEN THE 390/Make Some Noise feat.ZORN,NORIKIYO

コチラはKEN THE 390名義の楽曲。神奈川は相模が生んだNORIKIYOとフリースタイルダンジョンでも審査員を務めるKEN THE 390との奇跡的なコラボが実現したわけだが、何と言ってもZORNの"見た目は大人 頭脳子供 俺は逆コナン 肩こり リウマチ レッツバスロマン"は最強のパンチラインに。誰もが半端ないって!と言ったはず...。


(出典:KEN THE 390 / Make Some Noise feat. ZORN,NORIKIYO (Lyric Video))

【2020.08.18更新!】KREVAとまさかのコラボ曲誕生!


昭和レコードを脱退したことで活動の振り幅が大きく変化したZORN。なんと2020年8月19日にSNSにてKREVAとコラボした楽曲「One Mic」のMVを公開&リリースすることを発表!ヘッズたちはすでにお聴きになったはずだが、BACHLOGICの心地良いサウンドにZORNとKREVAの声がもう最高...の一言。実現するとは思っていなかったからこそ、この興奮は絶頂でございます。


(出典:ZORN / One Mic feat. KREVA 【Official Music Video】)

なお、MVでは仲良くZORNとKREVAが自転車をニケツ。新小岩と葛西出身の2人が葛西臨海公園を冒険する姿、なんかエロい。KREVA自身も最近はPUNPEEとコラボするなど、こちらも活動の幅が増えただけに今後も誰とメロディーを奏でるのか気になるところ。

なお、今回の楽曲で最高のパンチラインは「アメリカ 並び替えたら 亀有両さんチャリで中川フェラーリ」。

サブイボです。

 

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生きる事に悩んだらZORNを聴け!

そんなこんなで、今回は不良少年から成り上がった「ZORN」を特集したが、まだまだ彼の魅力を伝えきれていないのが正直なところ。

"ZONE THE DARKNESS"時代のブラックな部分をもっと深く知りたいという方は、やはりYouTubeでディグりその世界観を堪能することをおすすめする。一つ言えることは、日本語ラップのカッコ良さと渋さを追求し、歳を重ねる度に進化し続けているラッパーであるという事。下町の不良少年が歩んだ道のりは、日本語ラップ好き以外の人々にもきっと響くはずである。例えば、刃物を振り回す通り魔。生まれた命を平気で捨てる親や、何かしらの事件を起こし人生を棒に振る者。"生きる"ことを放棄してしまった若者達にとっては、全ての楽曲に参考できる部分が多くあると私は考える。

そして、2児の父でありながら塗装工の職人。ラッパーとして成功を収めてもなお、庶民的な一面がある「ZORN」は今後も多くの方に好かれることは間違いないだろう。

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