6月27日、早雲がシングル「The first day」をリリースした。
【Release info】
2021.6.27 配信リリースThe first day/早雲
Produced by BoNTCH SWiNGA @BoNTCHSWiNGAhttps://t.co/22ftu3QzAHUMB2020本戦の直後に書いた
俺にとって一つの節目となる40小節
優勝の後に何を思ったか、、
現場やDVDを見た方はその後日談として聴いて頂ければ🙏— 早雲 (@ZERO_G_S) June 23, 2021
始まりの日、というタイトルが意味するところ、早雲がこの曲にかけた思いについて語ってくれた言葉を、本記事をご覧の皆様に少しでもお伝えしていきたい。
「Reflection」、そしてUMB優勝後初のリリース
2020年、早雲は2ndアルバム「Reflection」をリリースし、UMB優勝と輝かしい活躍を見せた。
京都の闘将、早雲が2ndアルバム「Reflection」をリリース
早雲は京都を代表するラッパーの1人だ。以前もこのサイトで取り上げた彼が10月25日にセカンドアルバムを発売することが発表され、ティーザーも公開された。 早くアルバムを聞くのが待ちきれないが、ウォーミン ...
それを安易に「飛躍の年」と表現したくないのは、彼が長年積み上げてきたもの、HIPHOPにかけ、地元・京都をRepしてきたことを考えると幸運というよりは当然受け取るべき結果だと感じるからだ。
他のラッパーにも当てはまることだが、人生をかけて磨いたスキルや音楽性を正当に評価されているとは言えない。
「牡丹花は咲き定まりて静かなり 花の占めたる位置のたしかさ」という木下利玄の歌があるが、太く揺らがない根の上に早雲が花開くのはこれから先の未来で、今よりもはるか高い位置につぼみを付けているのではないだろうか。
「Reflection」リリース後に行ったメールインタビューからも、HIPHOP、地元のシーンへの思いが伺える。未見の方がいれば、ぜひご覧いただきたい。
【独占インタビュー】早雲が2ndアルバム『Reflection』、自身のHIOHOP観を語る!
10月25日に待望の2ndアルバム『Reflection』発売し、より濃厚な自身の世界観を見せつつその高いクオリティが好評な早雲だが、この度当サイトが行ったメールインタビューに答えてくれた。 『Ref ...
なぜ最新リリースの「The first day」よりもまず去年の出来事について触れたかたというと、今回の楽曲はそれらの経験、特にUMB優勝後の心境をリリックにしているからだ。
▽早雲「The first day」
どこか「Reflection」のジャケットを連想させるデザインで、プロデュースはおなじみbontch swingaだ。
後ほどご紹介する制作の経緯でも語られているが、リリック先行で作られた曲というだけあってビートの雰囲気も「Reflection」収録曲とは異なった趣だ。
ビートに使われているサンプリング音もクリッピングなどトレンドを採り入れ時折渋いアクセントも効かせていながら主張しすぎず、あくまでもリリックを際立たせている。
余談だが、リリック先行で作られる曲は今や日本だけでなく、世界的に見てもかなり珍しいのではないだろうか。
眠れない 眠っちゃいけない気がして
横たえた身体を起こす これで二回目
今まで連れ添った怒りや痛みへ
裏切りがないように言葉を繋いでる
導入部分ではUMB終了後の自身を率直に表現しており、かつ、これまでキャリアの中で音楽や自分自身に正面から向き合ってきた日々が伺える。
何も掴めなかった 空の左手
2020 むすんで 21 ひらいて
など、Reflection収録曲"Hands-Finger play song"を連想させるリリックが登場したと思えば、場面は内省的な心象風景から家族が待つ地元へ変わる。
耳に残る歓声を振り切って 静寂の中
音の鳴る日常に戻ろう
洗い物を片す台所 洗濯を終え
穏やかな今年最後の夜
丁寧に生きよう 寝かしつけた子ども達の
胸にそっと掌
外を見ればキリが無い 未だ知り得ない
俺自身の内側の底の底を
一つずつ拾って 形取って
俺の手元に現れるリリックは心(中略)
はっきり分かってた この山を越えれば
またすぐに次の山が待ってるってこと
花には風が吹き 月は朧
“この夜だけは”も気がつけば早朝
頂上の景色もそこそこにして
ここからまた新たな道を通そう
そろそろ行くよ 次の山の向こう
Life gose on 思い出話はまた今度
ファンからすると、「これぞ早雲」という表現が満載で嬉しくなる。
やはりこれまでアルバムリリースや、UMB優勝まで一歩一歩進んできた人だからこそ、前に進んで頂上の景色を見るためには日の当たらない日々が大切なことが身に染みているのだ。
「The first day」楽曲制作の背景
「The first day」を制作した経緯について、本人からコメントをいただいている。早雲自身が楽曲制作にかける思い、UMB優勝後の心境について丁寧に綴られているのでぜひ全文を見ていただきたい。
この曲を書き始めたのはUMB2020優勝の日の夜、宿泊先のホテルでです。
興奮や安堵感に加えて、優勝したことにいま一つ実感が湧かず、思考が止まらなくなって、なかなか寝付けず、最終的には気づけば朝方までこのリリックを書いていました。
書き終えたのは年明け1月の4〜5日くらいです。リリックの冒頭に“眠れない 眠っちゃいけない気がして、、”とあるように、当時の様子や思いを、詩的な情緒を崩さない範囲でなるべく率直に落とし込みました。
特に意識したわけではなく自然とそうなりました。ホテルの自室でいてもたってもいられず、半ば衝動的に書き始めたことがそうなった原因かと思います。
事実、ビート先行での制作がほとんどの中、この曲はリリック先行で書き上げました。この曲は僕にとって節目であり、リスタートの曲です。
UMB優勝という結果は確かに大きなものだと思いますし、一つの目標でもありました。しかし、本当に手に入れたい物や場所はもっと遠くにあって、優勝はそのきっかけになり得るものでしかありません。
今やUMB以外にも大きなMCバトルの大会はたくさんありますし、そこで優勝したからといって誰もが必ずしも劇的に環境が変わるわけではありませんし、僕自身それだけで何かが大きく変わるようなタイプでは無いと自覚してます。自分が望む道を行くためには
『今まで通り、変えちゃいけない。ただ目の前のリリックを』
と、一つの目標であったUMB優勝を成して、ふとした拍子に過去を振り返って、感傷に浸ってしまいそうな自分自身をリセットする必要がありました。
そして、その決意をもって次の制作に進むのだから、優勝後一つ目のリリースはこの曲しかない、と書き上げた年明けの時点で決めていました。
別の制作も進んではいますが、この曲をリリースするまでは一切リリースしないと仲間内には公言していたほどです。
「本当に手に入れたいものや場所」がどんなものかは、実際にその時にならないと我々は知る事ができない。
だが、近年のバトルシーンの拡大に間違いなく一役買ったUMBでの優勝はゴールではなく、もっと先にある高いところを目指していることが分かっただけでも喜びだ。
これからも進化する姿を目の当たりにできるのだから。
早雲は時折、「影響を受けやすい」「感傷に浸ってしまいそうになる」と自身を評することがあるが、仮にそういった面があったとしてもそれを自覚してメタ視点から分析するのは誰もができることではない。
「The first day」は「Reflection」と、次作EPを繋げる存在となるだろう。
これから始まる新しい日々は、どのように色づくだろうか。
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