P-NOMの進化したスキルが光る!1stEP「GREEN FOREST」

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9月13日に配信、10月1日にフィジカルリリースされたP-NOMの1st EP「GREEN FOREST」

昨年10月に発売された1stアルバム「HAPPY VERSE DAY」以来のリリースとなるが、1年の間にもライブやバトルなどの現場を重ね、スキルはより多彩に、表現はより深くなった。

今回は、これからシーンでもさらに注目が集まることが予想される彼女のリリース作品についてご紹介していこう。

1stEP「GREEN FOREST」

▽P-NOM&BoNTCHSWiNGA「GREEN FOREST」 

各種配信&ストリーミングはこちら

P-NOM初のEP「GREEN FOREST」は、前作と同じく全曲BoNTCHSWiNGAと共同制作された。

全曲客演なしのソロで、P-NOMの世界観を深く楽しめる。

GREEN FOREST

EPと同名曲のGREEN FORESTは、タイトル通り緑豊かな森に一歩踏み込んだようなイントロから始まる。

祝祭感のあるイントロから、P-NOMのリズミカルなフロウに繋がる。

欲望に埋もれたConcrete Jungle
重い腰あげ思いのままJUMPする

欲望に埋もれたConcrete Jungle
重い腰あげ思いのままJUMPする
皆生きて来たろ 本能のままに
それが現代では本当とは何?
平等に手に持つcontroller
お前らの行く末殆ど網羅
後悔なんて言葉 I don't knowさ
全てを受け入れ愛と呼ぼうか

コンクリートジャングルでは高層ビルが立ち並び、理想を持って都会に出てきても目前の名声や欲望に目がくらんでしまいやすい。

ありがちな甘い誘惑にはっきりとNOと言いながら、しがらみを越え一本道に例えた自分の目標に向かって邁進する。

P-NOM自身の決意表明的なメッセージにもとれるが、色々と閉塞感に満ちた社会に生きる我々リスナーにも刺さる楽曲だ。

絶対零度

「GREEN FOREST」の開放的な空気から一転、シリアスなピアノビートに乗ってP-NOMのシャープなフロウが際立つ「絶対零度」

あらゆる分野で二項対立ばかりが取りざたされている昨今、人はどちらかを選ぶのではなく自分で自分の考えを持つことを忘れてしまいがちだ、ということを思い出させてくれる。

お前らが提示してくるのは決まって二者択一
己の居場所がないとしても待ってろ今から行く
長い冬を越え 春が来る氷点下を越え
October November季節が回っても
Pitch&Stride止めぬ挑戦者
己に言い聞かす足を止めるな

全てを奪ってく絶対零度
瞳閉じたならそこでTHE END
どれだけ待っても春が来ないなら
己の足で迎えに行く

そして、自分で考えて得た理想へ向かう道すがらに困難が多く待ち受けていたとしても、たゆまず努力を重ねることが自分に対して誠実であることだ。

あたり見回すと流行り病
内面も外面も飾りじゃない
本当の君はどこ?形がない

というラインは、コロナ禍でバーチャルな繋がりが増えたことと、その時々の流行にばかり囚われ個人の実体が掴めない風潮がかけられているように思う。

ミニマムな言葉だけで描写しているからこそ、真に迫るものがある。

chamelon style

「chamelon style」は、個人的に本EPに収録されている中でも最もP-NOMのラップスキルが味わえる曲だと感じた。

80年代的なシンセを使った楽曲のサンプリングビートに、硬い韻が続くオーセンティックなHIHPHOPチューンに仕上がっている。

clap

「clap」は、EPのリリースに先駆けてMVが公開されている。

公開日が7月24日となっているのは、EPの発売が当初8月に予定されていたからだろう。

幸せならば手を叩こう
しずむ ゆうひ ひとり ふたり
帰って行く

皺寄せながら目を覚そう
ひとみ てらす あさひ ひとり
追いかけて

辛い日々は今だけ
今日も私は皺寄せ
削る体詩に乗せ
華を咲かす旅に出る
皆が探す幸せ
時に人は間違えるけど
気にするなよ失敗
皆頑張ってる、うん、それで良い

ほがらかな日差しの中で一服しながら、柔らかな空気漂う浜辺で、あるいは歌詞を書きつつコーヒーを飲みながら暖かいリリックがビートに乗せられていく。

収録曲の中で唯一、私という一人称が使われている。(というか、一人称が登場すること自体が珍しい印象だ)

人目気にして靴を磨く
となりじゃなくて前を見ろ

というラインは、「GREEN FOREST」はもちろん、P-NOM自身のスタンスが現れたリリックだと思う。

YUMENONAKA

ラストを飾る「YUMENONAKA」は、90年代後半的でダークな雰囲気の曲調だ。

吹雪のような風音、抑えめなトーンのhookですぐに前曲「clap」とは全く違う楽曲であると分かる。

曲全体を通して、悩みや変わらない夢見た世界とは程遠い状況の只中にいることへの焦燥感が描かれている。

同じくシリアスなトーンだった「絶対零度」では、もがき苦しんでいても、結局はやれる事をやるしかないというメッセージが込められていたように思うが

「YUMENONAKA」で描写されているのは、まさに苦悩の中にいる時の心象ではないだろうか。

夢の中を永遠浮遊 
普通じゃ味わえない
Futureは
真っ逆さまの夢の中
ずっと会ってもない奴らから
ひっきりなしのPhone call
決まり文句 どこで何してんのか
分かったような口調で叶ったのって
同じ問いに
決まって答える現在地 夢の中

という2ndバースは音楽ならずとも、夢を追った経験のある人なら心身に染み入ることだろう。

自分の理想が程遠く感じられる時、同じ毎日を繰り返しているようで無意味に感じられる時期はまさに寒さ厳しい冬のようだ。

もしかしたら、本作で意味するFORESTとは夢や理想のことを指しているのではないだろうか。

決まった道もなく、ずっと同じような景色が続く、ゴールがどこにあるのかすら分からない。調子よく進める時もあれば時には下り坂が続くこともあるだろう。

「YUMENONAKA」で私たちは、まるで夜の森の中にいるような気分でEPは終わる。

でもそれは現実で、夢半ばで森を出るか、全てをかけ出口の景色を信じて進み続けるかは自分で決めるしかないのだ。

ジャケットデザインはお馴染み70m(naomi)

「GREEN FOREST」ジャケットのアートワークは、「HAPPY VERSE DAY」と同じく70m(naomi)が手掛けた。

P-NOMが飼っていたシベリアンハスキーが描かれたシャープでクールな「HAPPY VERSE DAY」のアートとはまた趣が違って、今作ではひまわりを付けたウサギが正面を見据えている。


1st アニバーサリーを迎えたアルバム「HAPPY VERSE DAY」も再チェックしよう

2020年10月18日、つまり去年のP-NOMの誕生日に発売されたメモリアルな1stALBUM「HAPPY VERSE DAY」から1年が経った。

ぜひ「GREEN FOREST」と「HAPPY VERSE DAY」を合わせて楽しんでほしい。

「HAPPY VERSE DAY」も配信・ストリーミングで視聴できるが、レーベルの公式ショップでフィジカル盤が販売されているので気になる方はお早めにチェックしよう。

Kotobuki Recoads公式オンラインショップ

昨年、当サイトで行ったリリース記念の特別インタビューはこちらから。

1stアルバム「HAPPY VERSE DAY」のリリース記念!P-NOM特別インタビュー

 

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