Awichは超人気ラッパーとしてすでに絶大なプロップスを獲得し、国内外のメディアでも頻繁に取り上げられていた。そんな彼女がこの度ユニバーサルミュージックからメジャーデビューし、話題を集めている。今回は、メジャーデビュー曲の「Shook Shook」を始め、過去の楽曲も交えながら彼女の魅力に迫っていこうと思う。
Awichはメジャーでもlitだった!
AwichはYENTOWNの一員として数々のアルバムを発表し、多くのラッパーとのコラボ楽曲を発表してきた。
2020年7月12日、彼女のインスタグラムアカウントにとあるティザーが投稿された。
動画自体は20秒弱と短いものだったが、ボディスーツとジャケットをまとったAwichが誰かの口の中に拳銃をねじ込むといったノワール映画のワンシーンのような内容だ。
さらに動画の最後にはたっぷりと尺を取って「UNIVERSAL 」のロゴが表示され、「Awichがついにメジャーへ行く!」とかなりのヘッズが沸き立った。
その数日後、メジャー第一弾シングルの「Shook Shook」のMVが公開される。
トラックは「洗脳」「WHORU? feat.ANARCHY」などYENTOWN時代からお馴染みのChaki Zuluだ。
まず画面に映されるのは、以下のメッセージだ。
One's surrounding changes depending on his or her state of mind.
環境を変えるのは、彼や彼女の気持ち次第
’’Stick’’and’’Rope’',some of the most ancient tools of home genius.
have been used to symbolize controlling the surroundings;the sticks for dispelling evil and the ropes for scizing good.
「なわ」は「棒」とならんで、
もっとも古い人間の「道具」の一つだった。
「棒」は、悪い空間を遠ざけるために、
「なわ」は、善い空間を引きよせるために、
人類が発明した最初の友達だった。 (阿部公房「なわ」)In Esoteric Buddhism.
these tools are depicted to illustrate detruction of ''trivisa'' -the three poisons;Moha-confusion,Raga-greed,Dvsha-hatred.
密教においては、「三毒」を滅するためにそれらの道具(縄と棒)を描いている。
三毒とは癡-混乱、貪-貪り、瞋-憎しみを意味する。
口の中からAwichを見ていたティザー動画とは異なり今度は男性が逃げまどい、Awichがゆったりとその後を追う姿を我々視聴者がドアの覗き窓から様子を伺うところ物語が始まる。
そして、「まさか女が来るとは」「君臨するとは」という第三者視点からAwichを見たパンチラインからラップが始まるという痺れる作りだ。
さらに「鋭さ 図太さ 備えたブルドーザー」と続く、そのままシーンをぶち壊す宣言と見ていいだろう。
パンチライン誕生の裏側
Awichはすでに性別関係なくファンがおり、超越した存在というイメージがある人もいるかもしれない。
しかし、インタビューでは「HIPHOP、とりわけ日本はまだまだmale-dominant(男性優位)なので女というだけで’’女枠’’にされ、『女の中ではいいけど・・・』と別のカテゴリとして低く見られてしまう。」
「男性ラッパーばかりのフェスにヘッドライナーとして出演した時も、私を知らない人達が『女!?』という顔をしていた。その時に『まさか女が来るとは』と思われていると感じ、それをリリックのトップにして掘り下げた。」
「男性は男性で厳しい競争に勝ち抜かなければいけないし、どちらの性別でも面倒な面はそれぞれある。ただ、『本当に(性別関係なくサバイブしていく)その覚悟あんの?』と聞かれたら、ラップにおいてはあると言いたい。」と語っている。
徐々に状況は変わっているように思うが未だに女性のラッパーに「フィメール」と枕詞がつくように、完全に公平とはいかないのが現状だ。
ちなみにサビは、
When I come with the brrt brrt
Better duck duck
You are shook shook shook shook
(私が爆撃をブチかます時、隠れた方がいい。あんたはビビッて恐れおののく)
I go blazy with the brrt brrt
Better duck duck
You are shook shook shook shook
(私の爆撃で燃やし尽くすから逃げたら?あんたは恐怖に震えてる)
と、彼女のlyrical murdererぶりが発揮されている。
Awichのこれまでの軌跡を振り返ってみよう
「Shook Shook」のトラックで聞こえる民族的なコーラスは、かつてAwichがkojoeやAKANEと発表した「BoSS RuN DeM」を思い起こさせる。
YENTOWN / bpm tokyoレーベルから出したアルバムとしては今のところラストとなっている「孔雀」のヒット曲「洗脳 feat. DOGMA & 鎮座DOPENESS」も好きな人が多いだろう。
※8月4日追記・・・Awichは現在でもYENTOWNクルーの一員として活動しているが、レーベルはYENTOWN / bpm tokyoからUNIVERSAL MUSICとなっている。8月3日投稿の記事ではYENTOWN自体を脱退したともとれるような表記をしてしまったため修正した。ご指摘してくださりありがとうございました。
政治家の愛人役としてセクシーでありながらミステリアスなスタイルのAwichが見られるが、このMVは映画「肉体の門」をオマージュしているという。
「Shook Shook」の中でも、「Brainwash(洗脳)バカばっかだ 全く」とセルフリファレンスしている。
BLM運動にも参加
Awichは日本で本格的な音楽活動を始める前、アメリカの大学に通いながら家庭を築いていた。
家族で日本に移り住もうとしていた矢先、彼女のパートナーが銃殺されるという悲惨な事件が起こってしまう。
その時の気持ちを歌った「Ashes」のMVには、実際の家族の映像が使われ彼女の娘も出演している。
そういった背景もあって、今年世界的なムーブメントなったBLM運動にも彼女は積極的に参加している。
インスタグラムではアメリカのニュースや彼女自身の意見を頻繁にストーリーに上げていたし、渋谷で行われたデモにも参加し、自らの経験に基づいたスピーチを行った。
その後、ヘイトや矛盾に立ち向かうメッセージを込めた新曲「Awake」を発表している。
国際的な活躍も期待される
今後も8月21日にメジャー初EP「Partition」のリリースや、12月4日公開の「サイレント・トーキョー」への主題歌の提供などさらなる活躍が期待される。HIPHOPヘッズ以外にもAwichの名前が広く知られるだろう。
すでに海外のラッパーやプロデューサーとコラボしている彼女だが、これからもトップとして君臨していくはずだ。
もちろん呼びかける際は「Your highness」で、失礼のないようにしたい。
Written by @mmrao