ASOBOiSMはその高い音楽センスやスキルで、今最も注目されているラッパー/ミュージシャンの1人であることは疑いようがない。2週間前に出たアルバムの「OOTD」はSpotifyだけで約100万再生、ライブやコラボなどでも活躍しているが、彼女はどこかミステリアスだ。
この記事の中で、ASOBOiSMがどんなラッパーなのかについて迫っていこうと思う。
様々な文化に触れて育ったASOBOiSM
ASOBOiSMの曲と言えばおしゃれで、チルで、センスがいい・・・という印象があるだろう。
彼女の声の良さとソングライティング等のスキルの高さが相まって、高いクオリティの曲を連発している。
しかし、ASOBOiSMはただおしゃれなミュージシャンというわけではなく、「あれ、面白いな」「ユニークだな」と思う魅力もたくさんある。
「OOTD」のリリースを記念して自らの半生を振り返る「I am ASOBOiSM」の中では、幼少期から外国の文化に触れていたと語っている。(10月18日のライブを終えてという記事もすごくよかったので是非見て欲しい。)
中学時代の部活で吹奏楽をしていたり、アメリカのポップソングを好んで聞いていた。その後アメリカ留学したことが大きな経験となっているという。たしかに今のASOBOiSM楽曲にもそのエッセンスは多分にあると感じているので、なるほど!と膝を打った。
その後弾き語りスタイルでのシンガーソングライターとしての活動を始めるが、MOROHAのライブを見たことをきっかけにラップを始めたそうだ。
2017年からASOBOiSMとしての活躍を始め、2017年5月にはEP「DWBH」をリリース。「Don't Worry Be Happy」のMVも公開している。
アイドル的な要素を求められたというシンガーソングライター時代と比べると、オープンな表現をしている。ちょっとブリトラっぽい。
2018年6月にリリースされた「DRAMA QUEEN」からはかなり現在の雰囲気に近くなっている。
時代を捉えた曲が大好評
ASOBOiSMは最初のEPの発売後、シングルを精力的にリリース。単曲でMVも制作するのは配信やサブスクと相性がいいが、そういった戦略だったのだろうか?
2019年8月にはApple Musicの「今週のNEW ARTIST」に選ばれるなど、徐々に注目を集めてきた。
曲のモチーフとなるのはSNSに囚われて自分を見失っている人、別れた恋人を振り返りすぎる人、自分の話しかしない友人、ナイーブで悩んでしまう自分・・・など誰もが共感できるものばかりだ。
UCHOTENは沖縄のバンドシシノオドシからTACKを迎えて、素直になれない2人の気持ちを乗せている甘酸っぱいサマーチューンだ。
TOTSUKA feat.サイプレス上野
ヘッズ的には同じく戸塚出身のサイプレス上野との「TOTSUKA」もおすすめしたい。
地下道奏でるStreet live
溜まり場の屋上 綺麗なビル5階跡形もなく消えた商店街
出てく同年代ただ奇想天外都会の波 身を任せ
頭ばっか良くなったって
All the people say "I miss that place"
思い出して笑うのさ(ASOBOiSM)Dreamlandからバス乗り込めば
Undergroundな街からでもメジャー
学生さん死ぬ気でチャリを漕ぐ
ILLなリバーサイド 俺の散歩コース
夜になればまるで誘蛾灯 そこ皆の居場所(サイプレス上野)
いつも通りスムースで気持ちいいフロウでみせるASOBOiSMと、彼女のリリックを受けストーリーを展開させていくさすがのサイプレス上野。一見意外な2人だが、お聞きの通り相性は抜群だ。
ナイーブ
ナイーブでは、だれにでも訪れるどうしようもなく落ち込んでしまう日、自分の事が嫌いになりそうな日について歌っている。
悲しい言葉トリガー 私が悪いんだ
滲んだ青空は too much perfect 嫌になった
ビジネス街には浮いた髪とTシャツが
まるで水と油 居場所はここにないな
Don't wanna cry anymore
流す涙もったいないの
夢にかいた想像よりも 悔しい日々だとしても
もちろん曲も良いが、MVにも工夫が凝らされている。自分の家なのに閉塞感があって、身動きもできない落ち込んだ状態をビニールシートで表現しているのはすごいアイディアだ。
最新シングルPRIDE
そして、最新曲「PRIDE」では、プライドが高すぎる人をテーマにしている。
絶対に認めない
自分の非も誰かのせいに
Your pride is too high「俺が振った」とかどうでもいいわ
君のマシンガンなtalkをzip up
知り合い自慢してどうする?
Wake up それは違う人の努力
見栄っ張りで見せつけちゃう贅沢
You cannot buy me with the money まじ迷惑嘘の言葉 don’t care that sh*t
強がり? するより
素直に say you’re sorry
できるほうが It’s so cool...
職場や仕事の付き合いで、同じ思いを持った経験がある人も多いだろう。
トラックも今までになくエネルギーを感じるアレンジで、聞いているだけでパワーが出てくるようだ。
MVでは、上がるhookに乗ってASOBOiSMと残業を強いられていた会社員がデスクの上で書類を破いているのだが、メロディも相まってかなりスカッとする。
これくらいの気持ちが職場に必要だ。一社に1人ASOBOiSM、心にいつもASOBOiSM。
Zoomgalsとしても活躍
ASOBOiSMの活動として忘れてはいけないのが、Zoomgalsの存在だ。
今さら説明するのもおかしいかもしれないが、Zoomgalsはvalkneeが外出自粛期間中の5月にギャルラッパーに呼びかけ作った「Zoom」が始まりだ。ちなみにASOBOiSMとなみちえは「HAPPOUBIZIN」でも共演している。
あたし作るギャルの『証言』集まれヘイターの森ラップゲーム
うっせーブーンバップ爺は沸いとれ サンタフェ見とけ(valknee)
まず外道の身 デジタルビンタしたい/アナログデート 無理の予定(なみちえ)
ルッキズムの沼で溺れちゃ令和Over Game は?脳3G?おつかれ(あっこゴリラ)
などパンチラインが満載だが、ASOBOiSMは当時銀行員として働いていて以下のようなリリックを残している。
I wanna stay home だけど銀行員
強制的 gotta work まじめんどーい
負のエナジー囲みまじかなしー
選挙は大事 学びまじくやしー
この曲がリリースされてからすぐにHIPHOPヘッズは「アツいマイクリレーだ!」と湧いたのだが、その後音楽をレビューする有名Youtuberのアンソニー・ファンターノが取り扱ったことでも注目が集まった。
彼は辛口の音楽レビュアーとして知られているのだが、その彼をして「それぞれの個性も立っててパフォーマンスもトラックもいい、fuckin fantastic。必ずメモして聞いてくれ。」とまで言わせている。
続く「生きてるだけで状態異常」は、当初クラウドファンディングのようなもののリターンだったと記憶している。
10月7日に公開されたMVは、ライブ映像を田島ハルコが編集して作られた。「Zoom」とは大きく異なり、ブーンバップなトラックだ。終盤には人間発電所のサンプリング音が聞こえる。
寂し我リヤのアンチヘイター
生涯駄文書くだけが芸か?(なみちえ)
朝起きてすぐ死にたいこの僕も
調子のいいフリ クソの稟議書
Slackまでもハブられて 豊島区鬱の相談会(Marukido)
人で発散して母さん泣かしてる
生きてるだけですごいでしょ もうtoksikなのはいらないわ(ASOBOiSM)
と、さらっとヘイターだけでなく音楽を切り取る風潮も煽っている。
その後も
まじヘルプ命の母とヒップホップ
解像度あげな負け犬の美学から
なめ合った傷つまみに飲みこむテキーラ
完璧に敵ミスってんじゃん(あっこゴリラ)
売れてなくても生まれつきちょづいてる
勝手にしょってる出役の美学
数年後顕著な口座の差額(Valknee)
起床即毎日ヒットポイントゼロ
起き上がるのに5時間かかり
気づいたら行くメンクリ(田島ハルコ)
とパンチライン満載のマイクリレーが続く。
アルバム制作も予定しているそうだが、どんなギャルい曲が聞けるのか今から楽しみだ。
ブレイク間近のASOBOiSMをチェックしよう
ASOBOiSMはすでに今も人気が高まっているが、もっと有名になるアーティストだと思う。
彼女が影響を受けたアメリカンポップスのように、大きな規模で活躍していくだろう。
まずは「OOTD」を聞き、I am ASOBOiSMの更新を待とう。